三章 武蔵野の風

やがて、ロータリーに滑り込んできたのは「吉64」吉祥寺駅行きの西武バスだ。プシューッと扉が開き、列を作っていた客が吸い込まれていく。私はあの老夫婦の背中を見守るように、少し間を空けて乗り込んだ。

車内はすでにそこそこの混み具合だった。花小金井駅からの乗客を飲み込むと、座席はすべて埋まり、立っている人もちらほらといる。
幸い、私は後方の一人がけの席に腰を下ろすことができた。老夫婦は少し前方の二人席に並んで座っている。その後ろ姿になぜかホッとしながら、
私は再びシルバーパスを鞄の奥へとしまい込んだ。
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